表面処理について
表面処理
素材表面の性質を高めるために行われる処理の一種で、代表的な処理方法として「めっき」、[塗装]、[熱処理]などがあります。 表面処理を施すことにより得られる効果として、[耐食性、耐熱性、耐摩耗性、潤滑性、硬さ、装飾性、絶縁性]などがあります。 これらの様々な効果が得られることもあり、[家庭用品、家電、自動車、二輪車、精密機器、コンピュータ、宇宙関連製品]など 多くの分野でこれらの技術が活用されており、世界的に見ても基盤産業の一つと言えます。
「めっき」とは・・・
表面処理のひとつで、素材の表面に金属の薄膜を被膜し、サビを防止するための耐食性・光沢を与え製品の価値を高める装飾性・ 摩擦などの抵抗から素材を守る耐摩耗性などの効果を高めるために行う方法です。
めっきの種類
「電気めっき」 「無電解めっき」 「溶融めっき」 「蒸着めっき」があります。
電気めっき
品物を陰極にして電気を流し、表面に金属皮膜を析出させる方法になります。
比較的被膜厚さの管理がしやすく、大量生産から少量生産まで処理が可能です。
低温での処理が可能で、品物が熱影響を受けないめっき方法です。
めっきの種類は、「亜鉛・銅・ニッケル・クロム・すず・アルミニウム、金・銀」などがあります。
無電解めっき
電気を使用せず品物をめっき液に浸漬することで金属皮膜を析出させる方法になります。
品物の種類、形状関係なくめっき厚さが均一な皮膜の形成が可能です。
さらに、プラスチックやセラミックなどの不導体にもめっきが可能です。
めっきの種類は、「ニッケル・銅・マンガン」などがあります。
溶融めっき
亜鉛・すず・アルミニウムなどの金属を溶融した中に品物を浸漬し、金属皮膜を析出させる方法になります。
大物や重量物の防食めっきに適しています。また、付着量が多く、防食性能が高いです。
処理温度が高いため、熱処理後のねじなどは性能が低下するため処理ができません。
溶融めっきは、めっき槽に浸ける様子から、「ドブづけ」とも呼ばれています。
めっきの種類は、「亜鉛・アルミニウム・すず」などがあります。
蒸着めっき
亜鉛・チタン炭化物・アルミニウムなどの金属や酸化物を蒸発させて、素材の表面に蒸発材料を付着させて薄膜を形成する方法に なります。
蒸着めっきには「真空蒸着」があり、メガネ・ゴーグル・カメラのレンズなどの反射防止膜、ミラー膜、UVカット膜や、スナック 菓子の袋の内側のアルミフィルムを形成する際に使用されています。
「亜鉛めっき」とは・・・
亜鉛めっきには、「電気亜鉛めっき」、「溶融亜鉛めっき(ドブづけめっき)」などがあります。 亜鉛めっきは、「クロメート処理」、「塗装」などを組み合わせることにより、表面の白錆防止など耐食性を向上させることが可能です。
亜鉛めっき製品の特長
・他のめっき金属に比べて安価です。
・めっき加工が容易で、製造管理もしやすい。
・めっき自体の耐食性の他に特に鉄鋼材料系に対し「犠牲防食作用」を有す。
犠牲防食 とは
めっき表面に癖があったり、切断端面など素地金属の露出があっても、素地金属の露出面が少なければ、優先的に周りの亜鉛が溶解し 鉄の溶解(腐食)を防止する作用です。
「化成処理」とは・・・
表面処理のひとつで、素材の表面に目的に応じた処理剤を作用させて化学反応を起こさせることで、耐食性や塗装処理を行う際の密着性・潤滑性・ 装飾性などの効果を高めるために行う方法です。 耐食性を向上させるための亜鉛めっきなどの後に行う「クロメート処理」、塗装の密着性を向上させるために行う「リン酸塩被膜処理(パーカライジング)」 などが化成処理になります。
クロメート処理
化成処理のひとつで、亜鉛表面の白錆を主目的に一部外観性も含めた目的でほどこされます。 金物、ねじなどに多く使用されるクロメート処理に、「有色クロメート処理」、「光沢クロメート処理」があります。
有色クロメート処理
電気亜鉛めっきの後処理として、緑黄色~黄金色~橙色を呈しています。 色合いはクロメートの厚みで変化し、通称めっきも合わせ、「クロメートめっき」と呼ばれています。
光沢クロメート処理
電気亜鉛めっきの後処理として、クロメート液に硝酸添加や、pH(ペーハー)管理により化学研磨力を上げ、めっき表面の平滑性を得ること により、光沢の良い表面を得ながらかつクロメート処理もほどこします。色は無色~青味色を呈しています。 米国ユナイテッドクロミウム社のユニクロディップコンパウンドが有名なため、通称「ユニクロめっき」とも呼ばれています。
リン酸塩被膜処理
化成処理のひとつで、塗装の密着性・潤滑効果・耐摩耗性などの目的でほどこされます。リン酸塩として、リン酸亜鉛やリン酸鉄・リン酸マンガンが使われ、「パーカライジング」、「パーカー処理」とも呼ばれています。さらに亜鉛系とマンガン系で処理する方法を「ボンデ処理」とも称しています。
「塗装」とは・・・
表面処理のひとつで、素材の表面を塗料の被覆で覆う方法です。塗装には、品物の装飾や素材の保護、防錆の効果があります。 また、類似した品物(金物やねじなど)を色分けすることで、種類や長さなどの識別の目的にも使用されています。 塗装の方法は、「吹付塗装」 「はけ塗り」 「浸漬塗装」 「静電塗装」 [電着塗装] 「バレル塗装」などがあります。 塗料の種類は、「メラミン樹脂」 [アクリル樹脂] 「ウレタン樹脂」 「シリコン樹脂」 「フッ素樹脂」 「エナメル樹脂」 「エポキシ樹脂」 「ポリエステル樹脂」などがあります。
ラスパート処理
ラスパート処理は、金属亜鉛層、特殊化成皮膜層、表面焼成層からなる高耐食表面処理技術です。
各層が化学反応や架橋効果でに強固に結びつくことより、強靭で緻密な複合皮膜を形成しています。
一般的な表面処理の単一皮膜による防錆機構ではなく、これら3層の相乗作用により総合的な耐食性能を発揮します。
・特徴
高耐食・・・3層構造の皮膜で様々な環境下で高い耐食性を発揮します。複合皮膜なので傷付きなどの損傷部でも耐食性を維持します。
カラーバリエーション・・・多彩なカラーバリエーションでお客様のニーズにお応えします。調色による色合わせも可能です。
低処理温度・・・処理温度が200℃なので、製品の物性に影響を与えません。
電食の軽減・・・アルミ材や高耐食めっき鋼板などに対して電食(異種金属接触腐食)を大幅に軽減します。
ノンクロムラスパート処理
ノンクロムラスパートとラスパート処理の違いは化成皮膜。
ノンクロムラスパートの化成皮膜はリン酸処理で、ラスパート処理の化成皮膜はクロメート皮膜。
カチオン電着塗装
被塗物を塗料に浸漬し、被塗物を陰極(-)、電着槽内の電極を陽極(+)としてこの間に直流電流を流すことで、被塗物側に
塗膜を析出させる電着塗装の1つ。エポキシ樹脂が主原料で、密着性が良く、ピンホールが少なく、耐食性に優れている。
また、塗装たれ、色ムラ、ごみの付着も非常に少ない。
溶剤を使用しないので、環境にも配慮された塗装処理。
粉体塗装
顔料、樹脂などをパウダー状にし、そのパウダー状の塗料を、付着される塗装処理。
粉体塗装は膜厚さが厚く、キズがつきにくく、錆が発生しにくい。
耐薬品性にも優れている。
ダクロタイズド
金属亜鉛を三価クロムで結合し、高い耐食性を有する銀白色の皮膜を形成する。
金属亜鉛フレーク、無水クロム酸、グリコール等の分散水溶液に被処理物を浸漬した後、約300℃の炉内で乾燥させ、
六価クロムがグリコール等の有機物によって還元され、不溶性アモルファスのnCrO3・mCr203を生成し、
これがバインダーとなって、数十層に積層された亜鉛フレークを相互に結び付けて皮膜を形成する。
無水クロム酸が金属素地表面を酸化して、強固に密着する。
着色(カラーコート)
金属亜鉛を三価クロムで結合し、高い耐食性を有する銀白色の皮膜を形成する。
金属亜鉛フレーク、無水クロム酸、グリコール等の分散水溶液に被処理物を浸漬した後、約300℃の炉内で乾燥させ、
六価クロムがグリコール等の有機物によって還元され、不溶性アモルファスのnCrO3・mCr203を生成し、
これがバインダーとなって、数十層に積層された亜鉛フレークを相互に結び付けて皮膜を形成する。
無水クロム酸が金属素地表面を酸化して、強固に密着する。
ウレタンコーティング
ウレタン塗装は外壁や屋根に使用されることが多い。
アクリル電着塗装
被塗物を塗料に浸漬し、直流電流を流し、塗装する。
アクリル樹脂は透明で染料などで、着色し、カラーコートなどにも使用される。
その他の表面処理
ニッケルめっき
ニッケルは耐食性に優れ、色合いも良い。硬さでも優れており、変色も発生しにくい。
各種金属に対して、密着性も良好で、装飾目的で使用されることもある。
機能面でも、耐摩耗性、耐薬品性に優れ、幅広い用途で使用される。
スズメッキ
錫は他の金属よりも毒性が低く、缶詰、食品用機器、文房具、自動車部品などでも錫メッキが使用される。
錫は融点が約230℃と低く、電導性に優れ、はんだなどでも多く使用される。
クロームメッキ
クロームメッキは外観が非常にきれいで光沢があり、金属製品、自動車部品、電気機器など様々な場面で
使用されています。耐久性、耐候性に優れたメッキでニッケルメッキや銅メッキなどの上に処理させることが多い。
パシペート処理
ステンレスねじやくぎなどは、加工時に不動態皮膜が破壊され、鉄粉や加工油なども付着し、腐食が進行する。
硝酸に浸漬させることにより、破壊された不動態皮膜を修復させる処理のこと。
・スーパーパシペート処理
パシペート以上に耐食性を強化した処理。
黒色酸化皮膜(黒染)
苛性ソーダの水溶液に漬け、黒色の酸化被膜を形成させる。その後防錆油を付けて、サビの進行を防ぐ。
酸化被膜なので剥離することはなく、非常に薄膜で、安定した皮膜厚さなので、寸法精度への影響は少ない。
表面改質
めっきや塗装などのように材料と異なる処理層を形成する表面処理とは異なり、
表面改質は熱処理やショットピーニングなどにより、表面の性質を変え、耐摩耗性、耐食性、耐熱性などの機能を向上させること。