鉄について
鉄と非鉄の違い
金属材料は大きく鉄系材料と非鉄系材料にわけられ、鉄は鉄系材料に類する金属材料です。
名称 | 特徴 | 主な材料 |
鉄系材料 | ・生産量、流通量が多い ・コストが安い ・大きな部品から小さな部品まで幅広く使用される |
鉄(純鉄)、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄など
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非鉄系材料 | ・鉄以外の金属材料を指す ・コストが高い ・鉄が使用しにくい、特殊な用途、環境で使用される |
アルミニウム、亜鉛、ニッケル、銅、鉛
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鉄の特徴
鉄は以下の特徴を持っています。
強度が高い
鉄には、炭素などが含まれているため、硬い材料となります。
錆が発生しやすい
鉄は、空気や水などに触れ続けていると錆が発生してしまいます。
錆が発生すると、強度が低下するため、表面処理などを行う必要があります。
安価に入手できる
鉄は、加工のしやすさ、生産量の多さなどの理由で市場に多く出回っている材料の一つであるため、安価で
手に入れることができます。
代表的な鋼材にはSS材などがあげられます。
多様な用途に対応できる
炭素などの元素の含有量の制御や熱処理などの加工処理によって、多様な用途に対応することができます。
鉄と炭素量の関係
鉄は材料内に含まれている炭素量により、大まかに3つの種類に分類されます。
鋼の5元素
5元素とは?
炭素鋼は、大きく5つの元素で構成されています。
これらの含有量を制御することで様々な用途に対応することができます。
しかし、過度な負荷や摩擦、使用環境などによって、炭素鋼が使用しにくい場合もあります。
そこで合金元素を足した合金鋼にすることで、耐摩擦性や防食性、強度などを向上させることで炭素鋼では
対応できない場所に使用することが可能となります。
5元素の特徴・・・炭素(C) マンガン(Mn) シリコン(Si) リン(P) 硫酸(S)
炭素(C) | ・材料の硬さに関係する。 ・炭素の量によって、鉄の区分が分けられ、鉄、鋼、鋳鉄に分けられる ・強度や硬さは主に炭素量で決定される ・炭素量が多いほど、熱処理がむずかしくなる |
マンガン(Mn) | ・材料の靭性(材料がどこまで粘るかの目安)に関係する ・耐摩耗性や衝撃強度、引っ張り強さに影響を与える |
シリコン (Si) | ・塑性変形(物が元の形状に戻らなくなるまで力を加えた際の変形)強さに関係する ・耐熱性にも影響がある ・量が多くなると材質が脆くなっていく |
リン (P) |
・多く含まれると材料の温度が低くなると本来の強度より低い力で破壊される現象(低温脆性)が発生する
・溶接性が悪くなる |
硫黄(S) | ・多く含まれると高温になった際に強度が低くなる現象が発生する ・溶接性が悪くなる |
合金元素による鋼の性質表・・・ニッケル(Ni) クロム(Cr) モリブデン(Mo) アルミニウム(Al) コバルト(Co)
名前 | ニッケル | クロム | モリブデン | アルミニウム | コバルト |
元素記号 | Ni | Cr | Mo | Al | Co |
強度 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | |
硬度 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
靭性 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | |
耐食性 | ◯ | ◯ | ◯ | ||
熱処理 | ◯ | ◯ | ◯ |
鋼板の代表的な種類と特徴・・・SS400材 SPHC材 SPCC材 SGCC SGHC SGH400
鋼線の代表的な種類と特徴
実用鋼の種類と特徴
種類 | 特徴 | 用途 | |
機械構造用鋼 | 一般構造用鋼 (SS材) |
・普通用鋼材。汎用性が高く、流通量も多い ・厚みが増えるほどに炭素量が大きくなる |
建築構造物、車両、橋梁 など
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機械構造用炭素鋼 (SC材) |
・機械加工後、焼き入れや焼き戻しなどの熱処理を想定した鋼材 ・5元素を制御することで強度を変更することができる |
リベット、軸、歯車、ピン、 キーなど
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機械構造用合金鋼 | マンガン鋼 (SMn材) |
・最もコストをあげずに引っ張り強度と熱処理性を改善する ことができるMn(マンガン)を添加した合金鋼 | 軸など |
クロム鋼 (SCr材) |
・クロムを添加することで熱処理後の強度をあげることがカム軸、ピン、歯車、ボルト、 できる | ナットなど | |
ニッケルクロム鋼 (SNC材) |
・クロム鋼(SCr材)にニッケルを添加し、伸びと靭性を改善 カム軸、ピン、歯車、ボルト、 した合金鋼 | ナットなど | |
クロムモリブデン鋼 (SCM材) |
・クロムとモリブデンを添加することで伸びと靭性、溶接性をよくした合金鋼 |
ピストンピン、歯車、軸、ボル トなど
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ニッケルクロムモリ ブデン鋼 (SNCM材) |
・ニッケルクロム鋼にモリブデンをさらに添加することで靭性と焼き入れ性をニッケルクロム鋼よりさらに改善されている |
歯車、軸、クランク軸、ボルトなど
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特殊鋼 | ステンレス鋼 (SUS材) | ・Cr(クロム)10.5%以上を含む高合金鋼。高耐食性を有しており、非磁性の材料もある |
建築材料、日用品、シャフトなど
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耐熱鋼 | ・何百度以上もの熱が発生する環境にて使用する鋼 ・マルテンサイト系耐熱鋼とオーステナイト系耐熱鋼がある |
内燃機関の排気弁、蒸気
タービン翼、シャフトなど |
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高硬度鋼
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・炭素鋼工具鋼(SK材) ・高炭素鋼、焼き入れ、低温焼き戻し。 |
やすり、刃物、プレス金型 など
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・合金工具鋼(SKS材) ・高炭素鋼+Ni、Cr、W、V ・焼き入れ、低温焼き戻し、靱性改善 |
切削工具、ポンチ、ゲージ など
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・高速度鋼(SKH) ・高速切削時の高温 (500度)に耐えれる工具鋼 |
切削用品など | ||
・バネ鋼(SUP3~13) ・高炭素鋼、焼き入れ ・高温焼き戻し、高降伏点、高疲労強度、高靭性 |
ばね材など |